<前編のあらすじ>
3人の息子が独立し、誰かに頼られることもなくなり、夫との関係も冷え切っていた秀美は、深い孤独を抱えていた。
試しに買ってみた5000円分の馬券が的中し27万円となったことで夫・拓哉から褒められた秀美は久しぶりに心が満たされた思いだった。
しかし当たりが続いたのは最初だけ。掛け金はどんどん増え、遊びで始めた競馬から抜け出すことができなくなっていた。
●前編【「私がどうしたいか」すら考えたことがなかった50代妻…子育て終了後の"虚無"が生んだギャンブル依存】
通帳の残高を見て…
春の終わり、風が少し湿り気を帯び始めた頃だった。夕食を終え、食卓にお茶を並べたあと、拓哉がぽつりとつぶやいた。
「……で、あいつらの結婚祝い、いくら包むかって話になるな」
秀美は、お茶を口に運ぶ手を止めた。
「ああ、そうね……そういうこと、そろそろ考えなきゃね」
数日前、長男から結婚の報告を受けたばかりだった。電話のスピーカー越しに、少し照れたような声で「秋に式を挙げようと思ってる」と言った。秀美も拓哉もその場で祝福し、あたたかな空気がリビングに流れたのを覚えている。
「通帳、今どこにある?」
そう言いながら、拓哉はいつもの貯金通帳を手に取った。秀美の心臓が、不意に跳ねる。
「……ん?」
ページをめくっていた拓哉の眉がわずかに動いた。
「これ……残高、200万以上減ってる…… いつの間に、こんな……」
秀美の手の中の湯呑みが震えた。言葉が出ない。喉の奥が詰まる。
