総務省が昨年発表した「住宅・土地統計調査」では国内の空き家が900万戸と過去最高を記録し、大きな波紋を呼びました。空き家というと地方の倒壊寸前の家屋を連想する人が多いかもしれませんが、近年は都市の空き家も増えています。
中道恭子さんの実家も都心の住宅地にある一軒家で、父親の遺産分割協議の際には評価額が億を超えていました。それもあってきょうだい3人が一歩も引かず、共有名義になったそうです。しかし、諸事情により実家は放置され、昨年には自治体から「管理不全空き家」に認定されてしまいます。
この先行政勧告を受けたら、実家の固定資産税は大きく跳ね上がります。そうした中でも中道さんの兄と妹は実家の処分で折り合わず、対立が続いているのだとか。「共有名義の相続は悪魔の選択」と話す中道さんに、億越えの物件が管理不全空き家となった戦慄の経緯を聞きました。
〈中道恭子さんプロフィール〉
東京都在住
56歳
女性
団体職員
会社員の夫、社会人の長男と3人暮らし
金融資産5600万円(世帯)
「お宝が出てきたら…」不信感が生んだ“全員集合”ルール
母が長患いの末に永眠してから1年も経たないうちに、後を追うようにして父が亡くなったのは、コロナ禍が始まる前の2018年のことでした。
私と兄、妹には、都内の一軒家と少しばかりの金融資産が残されました。父は生前、家は兄に引き継いでほしいと考えていたようです。しかし、父が亡くなった時点で実家の時価評価額は億を超えていて、相続税を納税する必要もあり、兄は経済的な理由から代償分割(法定相続分に満たない他の相続人に対して、不足分を現金などで支払って相続すること)を諦めたようでした。
その結果、実家は3人きょうだいで等分に相続することになりました。つまりは共有ということになります。これが悪夢の始まりでした。
私は兄と5歳、妹とは7歳年が離れていて、年齢差があるためか、幼い頃から一緒に遊んだこともあまりなく、仲も決して良くはありませんでした。
それもあって、相続登記を済ませた後に兄が「家はすぐに劣化するというから、家の中の片付けを始めた方がいいかもしれないな」と提案した時、妹が「誰かが先がけしないように、同じ日に皆が集まって片付けることにしない?」と言い出したのです。
これには驚きましたが、確かに兄はともかく狡猾な兄嫁は信用できないところがあり、万一、実家からお宝でも出てきたら、私や妹にはダンマリを決め込みそうでした。そこで私も妹に賛成し、毎月きょうだいで集まって家の片付けをすることになりました。