「これどうしてくれるの?」

苛立った声に小枝子は喉が締まるような感覚になる。レジ台に置かれているのは持ち手が折り畳めるタイプの鏡だ。しかし小枝子の目の前にある鏡は持ち手が取れてしまっている。

「……壊れたということですか?」

「そうよ。なんでこんなことになるわけ? 折角、この店で買って使おうと思ったのにさ、こんなすぐに壊れるようなものを売っていいと思ってるの? いくら100均だからってある程度のものを売らないとダメなんじゃないの?」

早口でまくし立てられる。

「も、申し訳ありません」

取りあえず小枝子は頭を下げた。

相手は名前も知らない50代くらいの女性客だ。しかし顔はよく知ってる。なぜなら彼女はこの店をよく利用している。

それだけなら何も問題ない常連客なのだが、彼女はとにかくクレームを入れてくるタイプの客だった。今回のように買ったものが壊れたと持ち込んできて文句を言ってくることが何度かあった。それ以外にも買おうとしていた商品が汚れているからと言って半額にしろと迫ってきたこともある。

「あの、すぐに新しい商品と取り替えてきます」

「そんなのもういいわよ。どうせまた壊れるんだからさ」

小枝子は再度頭を下げる。