進まぬ片付けに焦りも…
片付けが始まると、家の中から記念コインや封筒に入った旧紙幣が見つかったりはしましたが、お宝というレベルのものはありませんでした。それよりも、実家の売却を視野に入れた兄や妹が、自分が主導権を握ろうと勝手に不動産業者を呼んだりして、「父や母が亡くなったばかりなのに」と嫌な気持ちになりました。
実家は祖父母の代から住んでいた家でモノも多く、月に1度のペースでは、ほとんど片付けも進みませんでした。3人とも生まれ育った家ですから、懐かしい品々が出てくるとつい手を止めて思い出に浸ってしまいます。中でも読書好きだった兄は、気が付くと父の書斎で蔵書のページを繰っていて、しばしば私や妹から不興を買っていました。
こんなペースだと永遠に片付けられない気がして、業者に委託した方がいいのではないかと何度も言ったのですが、兄や妹はあまり乗り気ではありませんでした。
妹の勝手な行動に兄が激怒
それから1年もしないうちに兄が心臓病で手術を受けることになり、きょうだい揃っての月に1度の片付け計画は頓挫しました。すると、その間隙を狙ったかのように妹が勝手に実家に清掃業者を入れ、主だった荷物を運び出してしまったのです。
妹は「今のままではらちが明かないと思って」と弁明しましたが、私が業者を入れようと話した時には渋ったくせに、どの口がそれを言うのかと腹が立ちました。後から100万円ほどの費用の請求書が提示され、兄も病室で激怒していたそうです。
どうやら妹は、兄のいぬ間に売却を急ごうと画策していたようでした。妹の嫁ぎ先は宿泊施設を経営しています。インバウンド(訪日外国人観光客)が増えていた中で、実家の売却代金を元手に設備投資をしたかったのかもしれません。
しかし、今度は兄の方が黙っていませんでした。兄嫁を通して、自分が復活するまで私たちが勝手に家を売ろうとしたり、一人で家に入ったりするのはまかりならぬと通告してきたのです。
とはいえ、1年経って空き家を維持するために結構な費用がかかることも分かってきました。住宅用地の特例で固定資産税は敷地200㎡までは6分の1、200㎡超は3分の1に抑えられていますが、1人あたりの負担は年間10万円近くになります。加えて、妹が勝手に頼んだ清掃業者代が頭数で割ってざっと30万円。他に、庭木の手入れ代や火災保険料、町内費といった支払いも必要でした。
妹に同調するわけではありませんが、これは早いこと処分しないと大変なことになる、そんな不吉な予感が頭をもたげてきていました。
●その後恭子さんの不吉な予感は見事に的中してしまい……。気になる相続トラブルの結末は、後編【億越え物件の実家がまさかの空き家に…“固定資産税6倍”の危機を前にしても家族が売却できない驚きのワケ】で詳説します。
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