発見された一通の遺言書を機に、故人の周囲の人たちがおどろおどろしい運命の渦に巻き込まれていく。そんなドラマや小説の中の話とばかり思っていた出来事が、いきなり自分の身に降りかかってきたのが東京都在住の会社員、杉浦晃一さん(仮名)です。
杉浦さんの父親の実家の事業所を継いだ叔母が急死した後、叔母が残した遺言書を持って現れたのは、杉浦さんが全く知らない、ある団体の弁護士でした。そして、そこに書かれていた叔母の遺言は、杉浦さんにとってあまりに衝撃的な内容でした。3歳下の弟さんともども、今もその遺言書騒動の渦中にある杉浦さんに、詳しい騒動の経緯を話していただきました。
〈杉浦晃一さんプロフィール〉
東京都在住
52歳
男性
会社員
団体職員の妻、母親(80歳)と3人暮らし
金融資産2200万円(世帯)
祖父母に溺愛された叔母との複雑な家族関係
私は中部地方の出身です。5年前に亡くなった父の実家は食品加工の事業所を営んでいて、父の妹に当たる叔母が代表を務めています。
この叔母がなかなか厄介な人で、若い頃からご近所や取引先といろいろ問題を起こしては周囲が尻ぬぐいをしてきた経緯があります。もともと叔母は父方の祖父母が40代になってから授かった子供で、父とは10歳以上も年が離れていたため、祖父母に溺愛されて育ったと聞きました。
全てが自分の思うようにいかないと気が済まない叔母と、それを許容する祖父母に反発した父は、大学入学を機に上京してそのまま東京でサラリーマンになりました。祖父母の死後は叔母の言う通りに事業所も実家も叔母に渡し、なるべく叔母と関わらないようにしてきました。
ですから、私や弟が叔母と会ったのは祖父母の葬儀の時くらいです。父の葬儀には叔母は多忙を理由に姿を見せず、1万円の香典が送られてきただけでした。
叔母は結婚歴がなく、今でいう“おひとりさま”です。70代ですから、いくら元気とは言え、いつ何が起こるか分からず、母からは「いくら不仲でもお父さんの一人きりの妹なんだから、何かあった時には助けてあげなさい」と言われていました。
とはいえ、こちらから接触しようとすると「財産目当てか」などと勘繰られかねない人なので、父の死後も特にやり取りはなく、疎遠な状態が続いていました。