天国の雅子さんからの贈り物

妻は一連のやり取りを何も口を挟まず見守ってくれていましたが、全てが片付いた後で私をねぎらった後、「天国の雅子さんが杏子さんと引き合わせてくれたのかもしれないね」と言われました。私は超のつく現実主義者で、普段ならその手の話を信じるタイプではありません。しかし、この時ばかりは妻に同感で、雅子さんが私に救いの手を差しのべてくれたに違いないと思った次第です。

杏子さんが娘の顔も見たいというので、全てが片付いた後に自宅に招待しました。ちょっとしたホームパーティでしたが、父や再婚相手の義母も参加してにぎやかな会になりました。父も杏子さんの顔を見て「うちに来てくれていた頃の雅子さんそっくりだ」と驚いていました。

その際、杏子さんから聞かれたのが、相続に際しての親や祖父母の遺産をめぐる“骨肉の争い”の凄まじさでした。

認知症の親に遺言を書くのを強要したり、取り分をめぐって取っ組み合いのけんかをしたり。「日本人は自制心が強く、礼節を重んじる国民性だなんて言われるけれど、相続の現場を見ていると自制心や礼節なんて、どこかに吹っ飛んでしまっている感じ」だと言います。

それでも、相続が発生する前に家族で話をしておくことや、皆が納得して遺言を用意することで“争続”を防止することもできるのだとか。

「私ももう“アラ還”ですが、私たちの仕事は定年がないので、できる限り“争続”で困っている方に寄り添っていきたいと思っているんです」と話す杏子さんに、70歳になった父が「ぜひとも我が家の相続もお願いしなくては」と返して大笑いになりました。

義母との関係は良好で父の相続がもめる可能性は少ないと思いますが、杏子さんには今後もお世話になれたらと思います。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。