<前編のあらすじ>
37歳の美穂は、飲み仲間の麻紀から「クリスマスは2人で飲まない?」と誘われるがマッチングアプリで出会った8歳年下の彼氏・翔太との予定があることを打ち明ける。
翔太は素直で甘えん坊な性格で、いつも美穂を褒めてくれるイケメン。若い翔太が選ぶデート場所に少し戸惑いながらも、美穂は彼との新鮮な時間を楽しんでいた。
麻紀に翔太とのエピソードを語る美穂は幸せそうで、結婚は考えていないものの、この関係がずっと続けばいいと願っていた。
●前編【「まさか男じゃないでしょうね」30代後半女子にできた1年ぶりの彼氏は年下犬系男子…幸せに忍び寄る不穏な影】
初めて迎えるクリスマス
翔太と付き合うようになってからの時間はあっという間に過ぎていき、初めてのクリスマスを迎えることになった。
この日も翔太がおすすめの店に行こうとすべて決めてくれたので、美穂はのんびりしようよと伝えるだけ伝えて、あとはお任せにしてクリスマス当日を迎えるのを楽しみに待っていた。
美穂はカーキのコートに黒のスキニーパンツという普段とあまり変わりのない格好で家を出た。
家を出るとマンションの前に車が停められている。そこから翔太が下りてきて美穂を迎えてくれた。テーラードジャケットに黒のスラックスで革靴を履いている。いつもよりも大人っぽく見えてとても素敵だった。
翔太は美穂を見つけるといつものように笑顔で迎えてくれる。
「ごめん、ちょっと遅れた」
「ううん、全然大丈夫だよ。今日の翔太、いつもと違う感じでかっこいいね」
美穂がそう褒めると翔太は嬉しそうに笑った。
「やっぱり今日は大事な日だからね」
2人は車に乗り込み目的地へと向かった。車は駅直結のタワービルの駐車場に停められた。そのまま翔太の後についていくと最上階にあるフレンチの店に到着する。
「え、こ、ここ?」
「うん。今日のために予約を取ったんだよ」
そう言って翔太は店の中に入っていく。
中に入るとギャルソンが完璧な対応で席まで案内をしてくれた。壁がすべてガラスになっていて夜景を一望できる。テレビドラマで見るような高級感あふれる店だった。
とても素敵なお店であることは間違いないのだが店内の雰囲気に美穂は気圧されていた。ラフな格好をしている人なんて1人もいない。明らかに場違いだと感じた。
こんなお店なら先に行ってほしかったと心の中で不満を漏らす。とはいえ、せっかく準備をしてくれたのだから口にはしない。
