外壁リフォームに30万円

台風直撃から数週間後。

費用30万円をかけた外壁のリフォームが終わり、生まれ変わったマイホームの外観を見た美律子は、心から満足した。いまいましい壁のひび割れは影も形もなくなって、まるで新築のような装いだ。

「これでまた、家族みんなが安心して過ごせるわね」

ほほ笑む美律子に、夫と息子たちも笑顔で応えた。

「これからは、俺が定期的に家の傷み具合を点検するよ。少しでも長く快適に過ごせるようにメンテナンスしないとな」

「僕も、たまには家の手伝いをする! 庭の水やりだって僕がやってもいいよ!」

夫の言葉を聞いて、息子も負けじと声を上げた。

「2人ともありがとう。無理しない程度にね」

美津子は、そっくりな性格の夫と息子に笑顔で感謝を伝えた。それから最近ぐんと背が伸びた息子に向かって声をかけた。

「それじゃあ早速、お花の植え替えを手伝ってもらおうかな。次は秋のお花を植えるのよ。コスモスとかどう?」

「うーん...…花だけじゃなく、果物と野菜も植えたら? トマトとかスイカとか桃とかさ!」

美津子の言葉に、息子は少し考え込んでから元気よく言った。

「おいおい、桃は実がなるまでに3年かかるんだぞ?」

「えっー!」

「そのころには、もう中学生になっちゃうね」

あからさまにショックを受ける息子を見て、美津子と夫は顔を見合わせて笑った。

息子もいつの間にか美津子たちに釣られて笑いだした。

雲一つない青空の下、美津子の自宅には家族の明るい笑い声が響いていた。

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。