酷暑による早期劣化

猛威を振るった台風は美津子たちの住む地域を通り過ぎて、海上で跡形もなく消滅した翌日、ようやく予約していた業者がやってきて家を点検してくれた。

点検の結果は劣化だった。外壁にできたひび割れは手抜き工事のせいではなく、単に劣化したためだということが判明した。実は毎年の酷暑によって通常の耐久年数よりも早く外壁塗装が劣化し、家自体が傷んでしまったのだ。いつもより家の中が暑かったのも、熱と紫外線によって外壁がダメージを受けていたせいということだった。

自宅の手入れに自信を持っていた美律子は、その診断結果に大きなショックを受けた。常に完璧な状態の家を目指していたのに、思わぬところに見落としがあったわけだ。

「私がもっと気を付けていれば……」

自責の念にかられる美津子の肩に夫は優しく手を置き言った。

「美律子、これは君のせいじゃない。むしろ早い段階で異変に気付くことができたのは、いつも家を大切にしてくれている美津子のおかげだよ」

「あなた……」

美津子は、夫の言葉に目を潤ませた。すると、その様子を見ていた息子も、美津子の腕にポンと手を置いて励ましてくれた。

「お母さん、心配しなくても大丈夫。今はDIYで家を修理する道具もいっぱい売ってるんだよ。僕も壁を直すの手伝うからさ」

「ふふ、ありがとう。頼もしいわね」

大人びた口調で子供っぽいことを言う息子に、美津子は思わず笑みをこぼした。

そんな家族の温かい言葉に支えられ、美律子は外壁のリフォームを決断するのだった。