夫のアップデートで家庭円満に

それからというもの、洋司の生活はすっかり様変わりした。

ゆかりに任せきりだった家事を一通り覚えて分担するようになり、毎朝自分とゆかりの分の弁当まで作るようになった。ゆかりと息子たちに「おいしい」と言ってもらえるよう、時間を見つけては料理の特訓に励んでいる。

洋司が変わったことは、それだけではない。

ゆかりの病院に付き添って医師の話を聞いたり、気圧予報アプリをチェックしたりと情報収集にも余念がない。ちなみに気圧予報アプリとは、気圧の変化による頭痛が起こりそうなタイミングを教えてくれる優れものだ。夫婦で同じアプリをダウンロードしておくことで、洋司はゆかりの体調不良にいち早く気付くことができるようになった。また、病院で処方された薬と洋司の献身的なサポートによって、ゆかりの症状は少しずつ緩和している。ここ最近、会社を休むほどの頭痛に襲われることは少なくなったことがその証拠だった。

ゆかりの体調が良い日が増えたことで、家族4人で遊びに出掛ける機会も多くなった。遊園地、動物園、アスレチックジム――。息子たちの体力に合わせるのは骨が折れるが、外出中のゆかりはいつもはつらつとしている。これが30代と40代の差というやつだろうか。家族のためにも、健康のためにも、ランニングでも始めようかと洋司は思った。

「ほら、洋司さん! 早くしないと置いてくよ!」

息子2人と一緒に洋司の前を歩いていたゆかりは、はじけるような笑顔でこちらを振り返る。

ゆかりを苦しめていた長い梅雨は去ったようだ。

洋司は初夏の日差しの中、彼のいとしい家族に向かって走りだした。

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。