深刻な病気につながる可能性も…
洋司は早速ゆかりを苦しめていた片頭痛について調べてみる。
それは洋司が思っていたよりもずっと深刻な病気だった。
一般的に「片頭痛」と呼ばれる頭痛のほとんどは「緊張型頭痛」と呼ばれる代物で、なんとか日常生活を送ることも可能だという。ただしまれに普通に生活ができないほどの痛みに襲われる強烈な「片頭痛」も存在するのだ。
ゆかりの症状が後者であることは間違いなかった。
しかも片頭痛が起こる「前兆」を伴う場合は、脳梗塞のリスクが上昇する。目の前がチカチカしたり、音や光に敏感になったりといった片頭痛の「前兆」は、ゆかりの身にも起こっていたことだ。
洋司は、深刻な病気につながるかもしれない片頭痛を「たかが頭痛」と一蹴していたことになる。ゆかりが愛想を尽かして出て行くのも当然だ。
洋司は散らかった家の中を眺めながら、今までの自分の行いを恥じた。
息子たちは洋司が四苦八苦して作った料理には手を付けず、冷凍庫のアイスを好き勝手に食べながらテレビゲームをしている。洋司は疲れ切って怒る気にもなれなかった。テーブルの上を片付けて、洗い物をして、息子たちを風呂に入れなければならず、おまけに洗濯機を回さなければ明日着ていくシャツもない。今からしなければならないことをリストアップするだけで、意識が飛びそうになった。
洋司はこのとき初めて、日々の家事がどれほど大変かを痛感したのだ。
(こんなに大変なことを、今までゆかり1人に押し付けていたんだな……)
ゆかりはつらい片頭痛を抱えながら、仕事も家事も育児も精いっぱいこなしていたのだ。一方自分は、ゆかりがいなければ息子たちの世話すらもままならない。それなのに洋司は、片頭痛で寝込んでいたゆかりを労わるどころか、心無い言葉をぶつけて傷つけてしまった。同僚の言った通り、誰がどう考えたって洋司が悪いのだ。