相続争いときょうだい仲の行方

孝さんと友里さんの相続争いは結局のところ相続財産の4分の1を友里さんが相続することで決着がついた。

「いまさら何を言うんだ? おやじの時もそうだっただろうが!」と孝さんの強い発言に対しても友里さんは毅然(きぜん)と対応していた。最終的には家庭裁判所に話を持ち込もうとしたところ、世間体を気にした孝さんが折れたという具合だ。

孝さんはいまだに友里さんの遺留分の主張について納得がいっていないようで、2人の間には溝が生じてしまっている。

一度相続争いで生じた溝は簡単には埋まらない。一生不仲のまま時が過ぎてしまう家族もザラにいる。もしかすると、孝さんと友里さんの溝も一生埋まらないままなのかもしれない。

遺言書で絶対に考慮すべき「遺留分」

遺言書を作るのであれば必ず遺留分についても考慮すべきだ。遺留分を侵害する内容での遺言書も一応は有効ではある。だが、ひとたび遺留分について権利を主張されてしまうと、遺言書の内容を完全には実現できなくなる。

それどころか、遺留分によって権利を失う側と得る側で争いが生じ、家族の間に溝が生まれてしまうこともあり得る。

遺言書は基本的に死後に争いが生じないように死者が思いを込めて作るものだ。だが、内容次第ではかえって相続人たちの間に争いを招くことになりかねない。

特に遺留分には注意されたい。世の常識や個人の価値観は常に変わりゆくものだ。昔は当たり前だったことも今では当たり前でないことも往々にしてある。

もう「長男だから」という理由で家を継いだり財産を多めに相続させたりする時代ではない。相続人にはきょうだいを除き、最低限の相続分たる遺留分が存在する。その権利を行使することは誰にも止められない。

繰り返しになるが、遺言書を作る際は必ず遺留分を考慮しておきたい。遺留分を侵害する遺言書は相続争いの原因でしかない。「財産はすべて長男が相続するもの」。その常識や伝統はもはや過去のものであるのだから。

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