遺言書を作る際には絶対に考慮しておかなければならない事項がいくつかある。その1つが「遺留分」だ。この遺留分という制度は十分に理解していない人が多く、それゆえせっかく作った遺言書が壮絶な相続トラブルを招くことも度々ある。

今回は、遺留分を考慮せずに作った遺言書がきょうだいの相続トラブルを招いた高木さん一家の話をしよう。

対立のきっかけ

「長男の俺が遺言書通りに全額受け取って何が悪い!」

最初に熱くなったのは兄の孝さんだという。それに異を唱えるのは妹の友里さんだ。おとなしい性格であり、声を荒らげることこそなかったものの「私だって生活がある。そもそも法律上、私にも一定の権利はあるんだから」と強く反論する。

事の発端は2人の母である広子さんが残した遺言書だ。その遺言書の内容を簡潔に記せば「全財産は生前の夫の意向に従い、長男の孝に相続させる」というものだ。既に孝さんらの父であり、広子さんの夫であった司さんは亡くなっている。

司さんは生前「うちにある財産は長男である孝に全部継がせるように」と広子さんへ言っていた。広子さんはその意思を覚えており、実現させたかったようだ。

なぜ私がこのような背景を知っているかと言えば、もともと私が司さんの遺言書を作っていただからだ。その流れで広子さんの遺言書も作成していた。ある意味では私も騒動の一環を担っている。それゆえ、孝さんと広子さんから話をされ、事の次第を知ったという流れになる。