<前編からのあらすじ>

町田一家の長男である竜也さんは、歳を重ねるごとに問題を起こし、家族を困らせてきた。成人後は一人暮らしで、実家へもめったに帰らなくなっていた。

父の秀夫さんは「最後まで自分をみとってくれた子たちに財産を残したい」と思い、竜也さんを相続から廃除することを決断。その旨を最後の言葉として残された兄弟に伝えたのちに亡くなった。残された長女の郁美さん、次男の健太郎さん、三男の直次さんは父の意思を尊重し、竜也さんに知らせずに遺産を分配することに。

しかし、数カ月後、竜也さんは遺産分割の事実を知り激怒。「どういうことだ?!」「親から相続財産を受け取るのは子どもの権利だろ!」と自身の権利を主張し、他の兄弟たちと対立することとなった。

●前編:【「これも報いだ」素行の悪い長男に手を焼いてきた家族…父親の死後、兄弟が企てた“仕返しの方法”】

相続人の1人を除いてした遺産分割協議の行方

結論から書こう。今回3人の兄弟たちがした遺産分割は無効だ。

一般的に遺産分割(遺産分割協議といわれる)とは、遺言が存在しない場合に相続人間で集まって遺産の分配割合や方法について話し合って決めるものだ。遺産分割協議は本来、相続人全員が参加し、その合意によって行われる必要がある。だが、今回の遺産分割協議においては相続人全員の合意がない。

そう、竜也さんが参加しておらずその合意もないのだ。竜也さんと3兄弟とは以前からほとんど会ってはいないようだが、それだけで竜也さんを省いていい理由にはならない。

遺産分割協議は単に連絡が取れないから、連絡を取りたくないからといった理由で相続人のうち1人でも省いて行っていいわけではない。

全員がそろってなされていない遺産分割協議は無効となる。仮に相続人の中に行方不明者があったとしても一定の手続きをとったうえで行方不明で連絡が取れないことを明確にしていく必要がある。今回兄弟たちはその手続きをとっていない。つまり、遺産分割協議は無効となるわけだ。

確かに遺産分割協議は私が作成した。だが、そもそもだが今回竜也さんの同意がないことを隠された状態で作成したものであるため遺産分割協議が無効なことに変わりない。