<前編のあらすじ>

高木孝さんと友里さんはきょうだいで、相続争いに陥っていた。母の広子さんが「遺産はすべて息子へ相続する」という内容の遺言書を残して亡くなったからだ。長男の孝さんも遺言書通り、当然自分が遺産をすべて受け継ぐものだと思っていたが、妹の友里さんは納得できず遺留分を請求するに至った。

●前編:【親の遺産を「すべて手に入れたい兄」vs「一部でも分けてほしい妹」古い価値観が招いた悲劇】

友里さんの心境が変化した理由

広子さんが亡くなった頃は司さんが亡くなった頃と比べて社会の状況や人々の考え方が大きく異なっていた。近年、感染症が大はやりしたことで社会が大きく混乱をしたことは記憶にも新しいだろう。ちょうど社会がその不安から日常を取り戻しつつあった頃に広子さんは亡くなり、相続が起こった。

この時、一連の社会の流れの中で友里さんの気持ちが変わっていったのだ。以前は「財産は家を継ぐ長男が継ぐもの」と感情面で納得できていたものが、感染症の影響で職を失った経験から不安が大きくなり「もらえるものはもらっておかなければ後で困るのは自分だ」という考えにシフトしていた。

友里さんはもともと法学部出身である。多少は民法の知識に覚えがあるようで、学生時代の知識を引っ張り出してきて遺留分が自分にはあるということを思い出したとのこと。

そうしていくうちに、だんだんと「なんで自分だけ我慢しなければならないのだろう。法で保障された権利を行使して何が悪い」という気持ちになっていたようで、遺留分を主張するに至った。