少子高齢化が大きく進んだ現代の日本では、ひとりきりで最期を迎える事態は決して珍しくありません。そのため自分で意思決定できなくなったとき誰に委ねるか、どのように判断してもらうかをきちんと考えておく必要があるでしょう。

話題の書籍『あなたが独りで倒れて困ること30』では、お金や健康など独身者を襲うリスクや「おひとりさま時代」を生き抜く具体的なヒントについて、司法書士の太田垣章子氏がやさしく解説。今回は本書の『はじめに』、第1章『おひとりさまリスク――「お金の問題」』の一部を特別に公開します。(全3回)

●第2回:「亡くなった時がいちばんお金持ち」になってしまう!? “不安でお金を貯めこむ”人の盲点とは

※本稿は、太田垣章子著『あなたが独りで倒れて困ること30』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。

自分の死後のためにエンディングノートは書いた方がいいでしょうか?

「終活」という言葉ほど、分かりにくいものはないと思います。

たとえば就活は、就職活動。婚活は、結婚するための活動。妊活は、妊娠するため。朝活は、朝の時間を自身のスキルアップや生活の充実のために使う活動のこと。では終活は? となると、どうもはっきりした定義はなく、人それぞれ回答もバラバラです。

一般的に「終活」とは、エンディングノートを書く、断捨離をする、お墓を準備する(埋葬のことを考える)という意見が圧倒的に多い気がします。

それも間違いではないのでしょうが、私の考える「終活」は、自分が自分の意思で決定できなくなった時に、誰にその意思決定をしてもらうか、それを決めてその人に託すことだと思っています。
一般の方々が考える「終活」のイメージとは、ずいぶん違うかもしれませんね。

話を戻して、エンディングノートを書くということですが、これは頭の整理をするもの、と考えてもらうのがいいと思います。残念ながら、エンディングノートには法的拘束力はありません。

そのためエンディングノートを書いたから遺言書を作らなくてもいい、公的な書面を準備しなくてもいいという考えは間違いです。エンディングノートに、延命治療等に関する意思表示を記載したとしても、正式なものではないとして、医療の現場で尊重してもらえないことも多いと思います。

「エンディングノートさえ書けば、その内容を尊重してくれると思っていました」

そう驚かれる人もいるかもしれません。確かに、エンディングノートに書かれていることは、書いた本人側から見れば、尊重されるべき内容のものです。エンディングノートを書くことで気付きがもらえたり、判断するべきことは明確になります。

ただエンディングノートは日記帳のようなものなので、それから気が変わることもあるでしょう。もっと言えば、第三者からするとそれが本人の書いたものかどうかすら疑問なのです。だから私たちのような立場の人間からすれば、そこに書かれた内容について、慎重にならざるを得ません。

一方で公的な書面であれば、作成時に公証人等が意思を確認しているので、こちらも安心できます。