「公正証書遺言」には大きなメリットがあります

次に「遺言書」でよく聞かれるのが、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」のどちらがいいか問題です。個人的には、絶対に公正証書での遺言書をおすすめします。

その理由は2点。まず大半を自書しなければない自筆証書だと、遺言書としての不備が見つけられないということ。

遺言書は様式が決められていて、そこを外してしまうと無効になってしまいます。自身で書いているだけだと、自分で様式間違いに気付くことができません。その点、公正証書の場合、公証人が書面を作成するので、そのような間違いが起こることはありません。

ネットや書籍で「遺言書の書き方」についての情報は出回っていますが、それとてあくまで例文です。本人も相続人も財産も違うわけですから、なかなかピタッとした例には当てはまりません。

「自筆証書遺言の書き方を教えてください」

そう聞かれることも多いのですが、一言で伝えられるものでもなく、こちらも回答に困ってしまうのです。

2点目は、遺言者が亡くなった時、自筆証書だと裁判所の検認手続きが必要になるということです。この手続きをしないと、遺言書そのものを有効として手続きすることはできません。

ところがこの検認手続き、裁判所が全相続人に対して「〇月〇日何時から検認手続きをするので」とアナウンスして呼び出します。仮に行かなかったとしても手続きは行われるのですが、立ち会った場合には、出席者に遺言書の内容はだだ漏れてしまいます。

たとえばお子さんがいない夫婦の場合には、配偶者と亡くなった者の親、もしくは兄弟姉妹が相続人になります。配偶者の立場からすると財産の詳細が亡くなった側の家族に知られてしまうのはストレス以外の何ものでもない気がしてなりません。

取り越し苦労かもしれませんが、特に亡くなった方が若かった場合などは、遺された配偶者の方が、ほかの相続人に「自分たちが家族であった歴史の方が長いのに、これだけの財産を配偶者が持っていくのか」と思われていないか、要らぬ心配を抱いてしまいます。

さらに検認手続きに先立って、自筆証書遺言を見つけた時は、開封してはいけません! 裁判所の検認手続きの中で開封する、そう決められています。これに違反したからといって、即、遺言書が無効にはなりませんが、5万円以下の過料の対象となっています。

でもこのようなこと、一般的には知られていないと思います。誰だって、遺言書を見つけたら「何が書いてあるのか」興味津々で、すぐに開封してしまいますよね?だからやっぱり「自筆証書遺言」は、お勧めできないんです。

一方の公正証書での遺言書の場合には、検認手続きは不要です。開封云々の話もありません。全国の公証役場で、遺言書が作成されたかどうかの検索サービスもあります。公証人が本人の意思を確認して作成するので、安心です。

「お金がかかるから」と言って、セコイことを考えるのは止めましょう。自分に万が一のことがあった時、遺された方が安心してストレスなく手続きできるのですから、必要な費用と割り切りましょう。