各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、SBI証券の6月(最終週)のデータをもとに解説。

SBI証券の投信売れ筋(販売金額)ランキングの2025年6月最終週(23日~27日)のトップ3は前月と同様に「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(通称:オルカン)、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」の順だった。第4位には前月の第7位から「SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし)」がジャンプアップし、前月第4位の「iFreeNEXT FANG+インデックス」は第5位に後退した。また、前月第8位の「SBI 日本株4.3ブル」は第6位に上がり、トップ10圏外から「ROBOPROファンド」が第7位に、「SBI 日本株3.8ベアⅡ」が第8位にランクインした。

 

◆再び史上最高値を更新した「S&P500」とインデックスファンド

6月は月次で株価指数「S&P500」は4.96%高と5月の6.15%高と合わせて2カ月間で11%超も上昇し6月27日には2025年2月19日以来、約5カ月ぶりに史上最高値を更新した。この米国株式市場の復調は、世界の株式市場に安心感という良い影響を与えている。「全世界株式(オール・カントリー)」、「先進国株式インデックス」など、主要な外国株式インデックスファンドは、米国株式の組み入れ比率が過半を占めるほど高く、米国株価の上昇が各インデックスファンドの価格上昇に直結する。

ただ、国内の投資家にとっては、年初からの為替(ドル円)相場のドル安・円高の影響がファンドのパフォーマンスにマイナスに響いている。株価指数「S&P500」は上昇したものの、ドル安によってファンドの評価が押し下げられる格好になっている。実際に、2024年末のドル円は1ドル=156.23円だった。それが、2025年6月末には143.91円になっている。為替だけで円に対して米ドル資産の価値はマイナス7.89%になっていることになる。「S&P500」が史上最高値を付けた6月末には、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は基準価額が今年2月の高値を抜けていておかしくないのだが、残念ながら基準価額の水準としては2024年12月末の水準を下回ったままだ。同様のことは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」や「iFreeNEXT FANG+インデックス」にもいえる。

米国においては、トランプ政権の政策の行方が経済状況やインフレに与える影響を見極めたいとしてFRBの利下げが中断されている状況にあるが、今のところ「ニュースのヘッドラインほどには、実際の事態は劇的に動かない」ということが確認されつつある。インフレ率も比較的落ち着いた状況にあるため、FRBの追加利下げ再開のタイミングが近づいているといわれている。一方で、国内の金利については日銀が「正常化」を意図して利上げのタイミングをはかっている状況にある。日米の金融政策の方向性をみれば、当面はドル安・円高への圧力が強い環境にある。

昨年までであれば、多少の下落局面があったにしても数カ月で史上最高値を更新する米国株式市場の強さが確認できたことによって、改めて「米国株人気」が強まりそうなところだが、実際の米国株ファンドの基準価額はそれほどには上昇していないため、投資家の行動は鈍っている状況だろう。4月の急落によるマイナスをちょうど取り戻すところまで価格が戻ってきた現在は、投資先を「継続する」のか、投資先を変更する=「乗り換える」のか、その思案時といえる。7月以降にどのような変化がみられるのかを注目したい。