<前編のあらすじ>

相談者の小野寺夏美さん(仮名)は26歳の保育士です。幼い頃に両親が離婚し、以来母親と地道に2人暮らしをしてきました。夏美さんは保育士としてやりがいを持ちキャリアを重ねてきましたが、仕事はハードかつ薄給で同じ仕事を続けることに“閉塞感”も持っていたようです。

しかし、“生き別れ”の父親が亡くなり、突然、遺産の2000万円を手にします。そして、そのお金を自身への投資にも使うことを決意。勤め先を辞め、オーストラリアでワーキングホリデーにチャレンジするといいます。ただ、大切な遺産。自分のために使える分は1000万円までと上限を決め、使わない部分は運用をしたいとも。

その1つの方法として、すでに保険会社から“ある保険商品”を勧められたそうですが……。

●前編:キツいうえに薄給…年収300万円保育士が退職を決心できた“意外すぎる理由”

「生命保険で資産運用」は果たして現実的なのか?

夏美さんが保険会社から提案されていた商品をうかがうと、一時払いの米ドル建て終身保険でした。

一時金でまとまった保険料を支払い、一定の期間が過ぎて解約すると、支払った保険料より多くの解約返戻金を受け取れる保険です。以前は円建ての保険でもお金が増える商品はありましたが、超低金利で魅力がなくなりました。そこで、日本より金利の高い米ドルなどの外貨建ての保険を、投資目的で活用するようになったのです。

たしかに夏美さんのように年齢の若い人が被保険者になる場合、保険にかかるコストが低いため、年齢の高い人よりパフォーマンスが上がります。しかし、ほとんどの保険商品は加入してすぐに解約すると、解約返戻金が払った保険料を大きく下回ります。また、生命保険である以上、死亡保険金の受取人を指定しなければなりません。配偶者や子どものいない夏美さんはお母様を受取人にすることになるでしょうが、お母様の死亡後の受取人はいるのでしょうか? 最近は生涯独身で過ごす「おひとりさま」が増え、保険商品の受取人がいなくて困るケースも散見されます。

その点について解説をすると、「ドル建ての保険ならば、ドルでの利率は決まっているから安心だと思ったのですが、受取人のことも考えないといけないのですね」

保険については、“トーンダウン”された様子でした。そして、

「経験がないので自分で投資をするのは不安ではありますが、ずっと関心はあったんですよね。もし保険に入ったとしても、投資にもお金を回そうかなとも迷っていたんです……」と夏美さん。

結局、一時払いの米ドル建て終身保険への加入は見送ることに。続いて、投資による資産運用について話を進めました。