各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、ゆうちょ銀行・郵便局の5月のデータをもとに解説。

ゆうちょ銀行・郵便局の売れ筋の2025年5月のトップは「HSBCグローバル・ターゲット利回り債券ファンド2025-05(限定追加型)」になった。3月にトップだった「iFree S&P500インデックス」は第2位に、第2位だった「つみたて先進国株式」は第3位に順位を落とした。第4位には「つみたて全世界株式」が浮上した。また、第5位に「JP4資産均等バランス」、第6位に「野村世界6資産分散投信(成長コース)」が浮上するなど、バランス型ファンドの人気が高まった。半面、3月には第4位だった「つみたて日本株式(TOPIX)」は第9位に後退し、第3位だった「大和ストックインデックス225ファンド」はトップ10圏外に落ちるなど日本株ファンドの人気が衰えた。

 

◆「ますますグロタ」と定額貯金

ゆうちょ銀行・郵便局の売れ筋ファンドランキングのトップになった「HSBCグローバル・ターゲット利回り債券ファンド2025-05(限定追加型)」は、「グロタ」の愛称で親しまれる単位型ファンドのシリーズだ。ゆうちょ銀行・郵便局での取り扱いに合わせて、ゆうちょ銀行・郵便局の投信キャラクターである「ますますくん」に合わせたのだろう、2024年1月から愛称を「ますますグロタ」としている。「ますますグロタ」は2024年7月に前回の設定があり、10カ月ぶりの新規設定になった。

同ファンドの特徴は、原則として約5年を1投資サイクルとする投資サイクルにおいて、主として各投資サイクル終了前に満期償還や早期償還が見込まれる、世界各国(日本を含む)の企業等が発行する債券に投資を行う。主に米ドル建ての債券に投資し、原則として各債券の満期日まで保有する。原則、為替はヘッジする。信託期間は20年だが、5年ごとに安定運用期間があり、そのタイミングで購入・解約ができる。5年間を5年未満の債券で運用し、投資した債券を持ち切りにするためあらかじめ運用利回りが推計できる仕組みの安定運用商品だ。ゆうちょ銀行・郵便局では、半年複利で10年満期(預入後6カ月以降は解約自由)の「定額貯金」が主力の貯蓄手段として利用されていることから、5年満期の利回り商品に似ている「ますますグロタ」はなじみやすい商品といえる。

「ますますグロタ」の運用実績は、前回設定の2024年7月設定ファンドで設定時の平均最終利回り(米ドルベース)が5.04%、為替ヘッジコスト(5年固定で3.19%)を加味した平均最終利回り(円ベース)は1.85%。信託報酬を差し引いて実質の平均最終利回りは年1.16%になっている。現在、定額貯金の5年(100万円の半年複利)の年平均利回りが0.322%であることから「ますますグロタ」へのニーズがみてとれる。