ホルムズ海峡封鎖にともなう石油・ナフサの供給不安が広がっています。商品パッケージの白黒化を決めた企業も出ているほか、シンナーや潤滑油の不足が建築現場に押し寄せているとされます。ただ、投資のプロほど、「危機こそ買い場」と考えるもの。いま大注目の銘柄について、つばめ投資顧問代表の栫井駿介さんが解説します。
※本記事は4/23につばめ投資顧問にて公開された「【銘柄分析】TOTOがAI半導体ブームの隠れた主役―株価は過小評価か?」を編集の上、栫井氏による特別コメントを付して掲載しております。
「第2の味の素」に化けるか? TOTOのハイブリッド戦略と技術力を評価する視点
今回は、多くの人が「トイレの会社」と認識しているTOTOが、実は最先端のAI半導体ブームを支える隠れた本命銘柄として注目を集めている背景についてお届けします。
まず最初に、読み進める前にぜひ押さえていただきたい「投資家としての着眼点」を整理してみましょう。
数ある半導体関連銘柄の中でTOTOに注目した最大の理由は、半導体の成長機会と既存事業の安定性が、絶妙なバランスで両立している点にあります。
半導体業界は特有の波(シリコンサイクル)が激しく、単一事業への依存は投資先として不安定になりがちで、大きな確信がないと手を出しにくい分野です。しかしTOTOには、国内シェアトップを誇る盤石な住設事業という土台があり、さらにアメリカという巨大な成長市場の開拓にも挑んでいます。
この「安定した本業」×「派生した半導体での成長」という構造は、ある大成功企業の姿と重なります。調味料のアミノ酸技術を応用し、半導体絶縁材料で大躍進を遂げた「味の素」です。TOTOも、祖業のセラミック技術から半導体製造に不可欠な部材(静電チャック)を生み出しており、味の素と同じような長期的な成長ポテンシャルを秘めているのではないかと考えました。
「味の素」との比較で見えてくる、TOTOのこれからの課題
一方で、現状を味の素と比較すると、TOTOはまだ見劣りする印象も否めません。半導体分野の有望性は非常に高いものの、既存の住設事業は安定こそしているものの、必ずしも収益性が高いとは言えないからです。
本業の利益率が低ければ、いくら新事業が伸びても企業全体の価値向上にブレーキがかかってしまいます。「既存事業の収益性改善」を成し遂げ、味の素のように強固な利益体質を作れるかどうかが、TOTOのこれからの大きな課題であり、投資家として注視すべきポイントです。
株式投資で「技術力」を評価する:経営者のアンテナ
今回の事例は、日本企業の技術力をどう評価するかという点でも非常に参考になります。自社のコア技術を特定の分野で極限まで磨き続けるのは日本企業の強みですが、優れた技術も市場に出られなければ花は咲きません。
どの市場でチャンスが訪れるかを完全に予見するのは困難ですが、だからこそ「この技術を別のどこで使えるか」という発想を経営者が常に持ち、変化に対応できるかが重要です。技術の高さそのもの以上に、経営の「応用力」と「アンテナ」こそが、技術力を投資価値に変える鍵となります。
すなわち、TOTOは単なる半導体ブームの便乗株ではなく、「本業の安定」と「技術の応用」が同居した銘柄と見ることができるのです。
