イラン戦争の拡大と長期化が懸念されています。停戦交渉ではアメリカとイラン双方の条件の隔たりが埋まらず、アメリカは地上戦を計画しているとの報道も。

ホルムズ海峡の封鎖が続く一方、イエメンのフーシ派が参戦したことで、原油の紅海ルートも使えなくなると、原油供給のさらなるひっ迫も予想されます。

こうした状況に株価相場は下落で反応。日経平均は3月30日にも一時2500円以上下落するなど、2月下旬の高値から約15%以上の下落となっています。

相場が荒れる時ほど、過去から学ぶ姿勢が必要です。1970年代のオイルショックの時代に経済と株価はどのように推移したのでしょうか。つばめ投資顧問代表の栫井駿介さんが解説します。

※本記事は3/26につばめ投資顧問にて公開された「中東緊迫で第2のオイルショック襲来か?インフレ時代の株価と有望セクター」を編集の上、栫井氏による特別コメントを付して掲載しております。

中東緊迫で第2のオイルショック時代の襲来か?【特別コメント】

投資の世界では、「インフレになれば実物資産の価値が上がり、株価も上昇する」と一般的に説明されます。しかし、歴史を振り返ると、1970年代の激しいインフレ期には期待通りに株価は上昇しませんでした。これはなぜでしょうか?

実は一口にインフレと言っても、株価にプラスに働くものと、そうでないものがあるのです。今回は、現在の相場を読み解く重要なキーワード「スタグフレーション」と、厳しい時代を生き抜くための銘柄選びのポイントについて分かりやすく解説します。

2つのインフレ:「良いインフレ」と「悪いインフレ」

インフレには、その原因によって大きく分けて2つのタイプが存在します。

1つ目は「ディマンドプル型(需要牽引型)」です。 これは景気が良く、「モノを買いたい」という人々の需要が高まることで価格が押し上げられるインフレです。例えば、コロナ禍の巣ごもり生活からの解放による「リベンジ消費」などはこの側面がありました。この場合、モノがよく売れるため企業は利益を出しやすく、結果として株価は上昇しやすい傾向にあります。

2つ目は「コストプッシュ型(コスト押し上げ型)」です。 これは原材料費やエネルギー価格などのコストが上昇することで、モノの価格が上がってしまうインフレです。重要なのは、景気が良くて需要があるから価格が上がるわけではない、という点です。

株価の重荷となる「スタグフレーション」の恐怖

需要が少なく景気が停滞しているにもかかわらず、コストだけが上昇して物価が上がっていく厳しい経済状況を「スタグフレーション」と呼びます。1970年代のオイルショック時や、資源高が続く現在の状況には、まさにこのスタグフレーションの懸念がつきまといます。

「インフレ=株高」という長期的なセオリーは確かに存在しますが、それはあくまで「企業が物価上昇に伴って利益を増やせるか」にかかっています。

スタグフレーションの局面では、企業は増大する原材料コストを、消費者の反発を恐れて販売価格にうまく転嫁(値上げ)することができません。結果として企業の利益は圧迫され、株価は上がらないどころか下落傾向に陥ってしまうのです。

厳しい時代、どんな企業に投資すべきか?

では、スタグフレーションの可能性が高まる中、私たち個人投資家はどのような基準で投資先を選べばよいのでしょうか。

明確に言えるのは、「コスト増を価格転嫁できない企業は避けるべき」ということです。横並びで価格競争が激しい業界や、原油高の影響をダイレクトに受ける「実物のモノ」を売るビジネスは、当面厳しい戦いを強いられる可能性が高いでしょう。

逆に、投資を検討すべき「強い企業」には以下のような特徴があります。

・高くても買わざるを得ない製品を持つ企業

例えば、一部の半導体材料のように、いくら価格が上がっても成長産業において「どうしても必要」「そこから買わざるを得ない」という圧倒的な強みを持つ企業は、不況下でもしっかりと利益を確保できます。

・コスト高の影響を受けにくい企業

ソフトウェア関連ビジネスなどは、実物の原材料をあまり使わないためコスト高の影響を相対的に受けにくく、強固な顧客基盤があれば安定した利益を生み出せます。さらに、そのソフトウェアが顧客企業の「コスト削減」に貢献するものであれば、なおさら需要が高まる可能性すらあります。

真に強い企業を見極めよう

「インフレだからとりあえず株を買えばいい」という単純な図式は、スタグフレーションの局面では通用しません。マクロ経済の波を正しく理解し、「価格決定力があるか」「コスト構造は強いか」といった視点で、本当に強い企業・事業・業界を見極めていくことが、投資を進める上ではとても重要になるでしょう。