個人投資家が「バリュエーションの歪み」を見抜き、銘柄選定に活かす視点を養う新連載。今回は、1日で時価総額約850億円が減少した京成電鉄の事例を検証する。アクティビストはどこを突き、市場はなぜ売りで応じたのか。その構造を読み解くことで、「含み益を抱える低PBR銘柄」の真の価値を見極める条件が見えてくる。

「新中計」公表後の株価下落 

2025年5月22日、京成電鉄の株価は1日で約12%という大幅な下落に見舞われた。時価総額にして約850億円が市場から消失した計算になる。引き金を引いたのは、前日に発表された新中期経営計画「D2プラン」だった。

なぜ市場はここまで過敏に反応したのか。それは、同社に対して強硬な姿勢をとっていた英国のアクティビストファンド「パリサー・キャピタル」が求めていた「明確な資本政策」に対する回答が、新中計に含まれていなかったからだ。

投資家が知りたかったのは、同社が保有する「巨大な含み益を持つオリエンタルランド(OLC)株式をいつ、どの程度売却するのか」「その売却益を自社株買いや成長投資にどう配分するのか」という具体的な数字だった。しかし、D2プランで示されたのは「資本配分の方針」という説明にとどまった。

この発表を受け、パリサーは市場の失望を指摘、D2プランの内容は株主の懸念の軽視であり、東証のガイドラインを無視している証、とまで猛反発した。一方の京成側は、「当社グループは公共性の高い事業を営んでおり、その事業特性上、安定性及び持続可能性が求められる」と、かねてから受けていたパリサーからの株主提案に反対の姿勢を継続。インフラ企業としての「公共性」を強調し、両者の主張は平行線をたどった。