1年後、ワーキングホリデーから帰ってきた夏美さんは…

それから1年後。日本に帰国した夏美さんが、再度事務所に来てくれました。

「オーストラリアの生活は夢のようであっという間に1年が過ぎました。最初の4ヵ月で語学学校に通い、それから旅行したり飲食店などで働いたりしたのですが、やり残したこともまだまだあって……。できればずっとオーストラリアに住みたいし、やはり保育士の仕事がしたいと心から思うようになりました。
オーストラリアでは現地の資格(チャイルドケア)がないと保育士の仕事ができないので、学生ビザを取って本格的に資格を取るつもりです。オーストラリアの資格があれば現地で働き、永住権も取れる可能性があるので。
日本に母を残すのが心配ですが、母も『私のことは気にせずがんばるように』と言ってくれました」。

そう話す夏美さんの瞳はキラキラ輝いています。やりたいことが明確になったためか、以前にも増してはつらつとした印象です。

オーストラリアの物価は日本よりずっと高く、その分アルバイトの給料も高く、飲食店でも日本円で時給2000円くらいは当たり前だとか。ワーキングホリデーの1年間でアルバイト収入があったので、実際に使ったお金は150万円程度で済んだことも教えてくれました。ただ、これから保育士の資格を取るための学校に1年半通い、その学費が150万円から200万円かかる見込みです。

「学校に通いながら働くことも許されているので、学業に支障のない範囲でアルバイトもするつもりです。私が日本で保育士をしていた頃の年収は300万円くらいでした。オーストラリアでチャイルドケアの職に就くと、日本円で500万円以上は普通に稼げます。物価は高くても、贅沢をしなければ貯金もできると思うんです」

夏美さんとしては残ったお金850万円ほど※で留学しても経済的に大丈夫かを確認したかったようです。しかし、倹約が身についた夏美さんが自分の将来のためにお金を使うのですから、問題があるはずはありません。

※ 2000万円のうち、800万円をIFAでの運用、200万円を預金に回した。そして、ワーキングホリデーで約150万円使ったため、夏美さんが”自身のために使える”と決めたお金は約850万円ほど。

さらに「藤田さんのアドバイスで始めた運用ですが、1年経って実績を確認したら、プラス7~8%くらいの含み益があって、驚きました。保険に入らなくてよかったです」

どうやら運用も順調のようです(投資は長期が基本ですので、1年経った時点の含み益で一喜一憂する必要はあまりないのですが、投資初心者の夏美さんにとって、うれしい出来事なのは想像にかたくありません)。

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変わりばえのない日常を送っている人にも、いつ何が起こるかわかりません。遺産を受け継いだのは幸運といえますが、それに浮かれてしまえば2000万円はあっという間に消えてなくなるでしょう。

お母様との暮らしで堅実な価値観を育んできたからこそ、夏美さんも遺産を有効に使え、“夢への切符”を手にすることができたのだと思います。亡くなったお父様へも最高の親孝行になったのではないでしょうか。