近年は上場企業が人員削減に舵を切るケースは多く、早期・希望退職の募集が増加傾向にあります。希望退職では割増退職金で退職者の当面の生活を保障しますが、条件は企業によってまちまちです。

割増退職金は魅力的なものの、それまでの定収入が途絶える以上、本来ならば慎重なシミュレーションが必要です。しかし、仕事を辞めたいあまり誰にも相談することなく夫が会社を辞めてきてしまったら……そんな夫婦の事例です。

ある日突然、夫が会社を辞めてきた…「しばらく休みたい」

今回の相談者の角田佳代子さん(仮名)は55歳の女性で、関東の地方都市で暮らしています。

夫の俊明さん(56歳・仮名)は上場企業でITエンジニアとして働くサラリーマン。都内の有名大学を出て、上場企業に勤め、20代で佳代子さんと結婚し家庭を築くという、“絵に描いたような”順風満帆なコースを歩み、会社での昇進も順調だったようです。ネックと言えば、都内への長距離通勤。往復4時間電車に揺られ出社していました。

お2人の間には3人のお子さんがいます。上の2人(長女・次女)はそれぞれ大学を卒業して、社会人として自立しています。末っ子の長男は私立大学の工学部の3年生です。長男も自宅を出て下宿生活をしているため、現在は夫婦2人の生活です。

子どもに教育費がかかるのも、もう少しで終わるという状況で、業績不振の俊明さんの会社が希望退職の募集をしました。そこへ、俊明さんが佳代子さんに黙って応募してしまったのです。

佳代子さんがそのことを知ったのは、俊明さんの退職が正式に決まってから。明るく、しっかり者の佳代子さんもそのときはさすがに頭が真っ白になったそうです。しかも、当分は「働かないでしばらく休みたい」とのこと。さらに、今後は「正社員として再就職をするつもりはない」とさえ俊明さんは言います。

佳代子さんとしては長男の卒業までの学費や仕送りは工面できても、夫婦の老後が心配です。そこでFPに相談しようと考えたのでした。

なお、佳代子さんは約10年前、長男が小学生の頃に教育費の準備でFP相談を受けられたリピーターです。