遺言書って自分には関係なさそうですが、書く必要があるもの?

「遺言書」と言うと、うちには財産はないからとか、お金持ちの人たちに必要なものでしょう? とよく言われます。でも司法書士の立場からすると、全国民の義務くらいに感じています。特に子どもがいない夫婦や、離婚再婚で子どもがいる場合や未婚の人……いやいやいや、やっぱり全ての人に必要です。

遺言書といえばある程度高齢になって、そろそろ人生の終わりを感じ始めた頃に書く(作る)もの、と思うかもしれません。でも若い世代でも、書くメリットはたくさんあります。

たとえば夫婦と、未成年の子どもがいる世帯。まだまだ現役世代でしょうから、遺言書が必要になる可能性はそう高くはありません。ただ万が一の時には、遺言書がないと面倒なのです。子どもがいると、相続人は配偶者とその子どもたち。親や兄弟姉妹は関係ないので遺言書がなくても楽勝だと思いがちですが、実は違います。

子どもが未成年でどちらかの親が亡くなった場合、遺された方の親が子どもを育てていくことになるので、相続もその親が受けるのが大半です。ただそうするためには法定相続分(配偶者が半分、半分を子どもたちが均等で)と異なることになるので、財産の分け方を決めるために「遺産分割協議」が必要になります。

ところが未成年者は、遺産分割協議ができません。そのため、子どもたちそれぞれのために、裁判所に特別代理人の選任申し立てをして、その子どもの代わりとなった特別代理人と遺産分割協議をすることになります。

この特別代理人は裁判所が選任すると、当然、費用がかかってしまうので、身内に依頼するのが一般的です。兄弟や従妹で頼みやすい人に、お願いすることになるのです。

ところがこれって、その方々に亡くなった人の財産が全部知られてしまうのですよね。それって抵抗ありませんか?

一方で「自分の財産は、全て配偶者に」という遺言書を作成し、遺言執行者を配偶者にしておけば、万が一の時の手続きは配偶者だけで簡易にできてしまいます。これは遺された者からすると、愛を感じます、感じるはずです。

ただでさえ若くして配偶者に亡くなられたら、それはショックだし、世話しないといけない子どももいるし、いろいろ大変なことでしょう。

さらに裁判所への特別代理人選任申し立てを自分でやろうと前を向ける人って、そういないのでは? と思います。そうすると司法書士や弁護士に依頼するしかなくなりますが、これも敷居が高いし面倒だし、費用もかかります。

そんな中で遺言書があれば、「自分が困らないようにしてくれたんだな」と亡くなってからも惚れ直すこと間違いありません!

遺言執行者が明記されていれば、金融機関の解約等も執行者が単独ですることができます。この遺言執行者は、別に専門家でなくても構いません。主に手続きをしてくれる(であろう)人を、夫婦で話し合って記しておきましょう。