エンディングノートは「頭の整理用」と考える

ではなぜエンディングノートは、ここまで普及したのでしょうか?

今や書店には、数多くのタイプが並んでいますし、100円ショップにも売っています。いつでもどこでも目にすることができます。

これは多くの方が、自分が高齢に差し掛かった時、何を決めて、何を書き出しておけば遺された人が困らないのか分からなかったところに、エンディングノートが登場したからだと思います。エンディングノートなら書き込みさえすれば、そういった疑問を解消してくれます。

さらには自分の人生を思い出すのにも、一役買っているに違いありません。万が一の時に知らせて欲しい人のリストなどは遺された人にとっても重宝なものです。

そして実際に、エンディングノートを書く時のポイントですが、そもそも法的拘束力がないため、完璧を目指さなくてもいいということです。

たとえば今持っている金融機関の口座。当然、金額などを書く必要はありません。ここでの利点は、普段使わない口座の洗い出しです。高齢になってくると、複数の口座管理は難しくなってきます。書き出すことで解約すべき口座が明確になってくるので、若くて元気なうちに口座を整理して、メイン口座に集約していくようにしましょう。

また仮想通貨やネット証券などは、本当に大変。本人しか分からない資産となる可能性があります。使っている口座に入出金があれば、そこから辿っていくことができるのですが、全てがネット上で、スマホの中だけで完結しているような場合には、正直本人にしか分からず、手がかりがなければ闇の中です。

以前、ご主人が倒れて意識不明になってしまった奥様が、相談に来られました。ご主人が資産の大半を仮想通貨等にしていて、そのことをご主人の友人から教えてもらったとのこと。てっきり資産は普通の金融機関にあると思っていたので、奥様は半ばパニック状態でした。

突然の病気で困惑している上に、家族を支えるお金が自分の理解できない仮想通貨になっている。しかもいくらあるのか、どこにあるのか、どうやったら使えるのかすら分かりません。それはパニックになっても仕方がありませんよね。なんとかスマホのロック解除はできたけれど、画面にあるアプリに入るためのIDとパスワードで躓いてしまったようです。

こうなってしまうと、法定後見制度を利用するしかなくなります。後見人になった弁護士がその後どのように解決されたのかは分かりませんが、どこかに記録を残していたり、その存在を家族に伝えていれば、違った結果になったかもしれません。

今は通帳の要らない金融口座などは、全てWEB上、スマホひとつで完結できることが多くなりました。そしてその大半には、IDやパスワードが必要です。

これもまたどこかに書き留めておかないと、若いうちは記憶できていても、高齢になるといずれ分からなくなってしまいます。セキュリティのこともあるでしょうが、エンディングノートを含めてぜひどこかに記録しておきましょう。

そしてここまで書いたエンディングノートを、いったん貸金庫に入れてしまう人がいます。万が一の時、貸金庫を開けるのは人が亡くなり一息ついた後です。だからそこに治療や葬儀に関することを書いていたとしても、エンディングノートが日の目を見る時には全て終わっていて書いてあった意向を汲み取ることはできません。

エンディングノートは頭の整理用なので、書いた後、大切なことは家族に思いを伝えたり、頼れる家族がいない場合には公的に備えることを考えましょう。