幼馴染の行動に違和感

史郎さんから園田さんへの土地の無償貸与が始まってから時間は流れ、30年が過ぎた。史郎さんも園田さんも亡くなり、それぞれの財産はそれぞれの子どもたちの世代に変わった。

史郎さんの財産は冨浦さんが相続した。対して園田さんの財産は匠さんが相続した。当然だが園田さんが使っていた土地は引き続き匠さんが資材置き場として使っていた。

冨浦さんは当然この事実を知っていたが「かつて父が貸していた土地である」と認識していたため特に何か行動を起こすこともなかった。

冨浦さんも匠さんもお互いが子供の頃からの付き合いが続いている、いわば幼馴染。

「親父たちみたいにずっと仲間でいようぜ」

「お前が言わなくてもそのつもりだよ」

園田さんの葬儀後に2人はそう語り酒を飲み交わしたほどだ。

ところが、ある頃から冨浦さんは変化に気付いた。それはちょうど相続から5年ほどが経ち、匠さんが園田さんから引き継いだ事業の拡大の乗り出した頃だ。無償で貸していた土地に匠さんが様々な手を加えようとしていたのだ。

具体的には、土地の外側をフェンスで囲い、内部をいくつかの区画に分けて、かつ簡易的な建物を設置するというのだ。

「ちょっと会社をでかくしようと思ってさ」

そう語る匠さん。彼に何ら悪意はない。なぜなら借りている土地だとは知らなかったからだ。しかし冨浦さんからすれば大問題。これまでと異なり「自分のもののように使う意思」を感じ始めていたからだ。

冨浦さんは焦り、このままでは土地が取られてしまうと怖くなった。

「あの土地を返してくれ」

匠さんに請求を試みたが、匠さんは「何を言っているんだ?」と取り付く島もない。ここから2人の仲が険悪になっていった。

●父親から引き継いだ土地を失うかもしれない“絶体絶命の状況”に追い込まれた冨浦さんでしたが、思わぬところで転機が訪れます。後編【「何も知らなければあきらめていた」幼馴染同士で土地トラブル勃発、50代男性が“乗っ取り”危機を解決した方法は…】で詳説します。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。