繰上げの手続きが1カ月遅くなると…

しかし、恵美さんは在職中(厚生年金加入中)で、65歳になるまで継続勤務予定とのこと。もし、恵美さんの繰上げ請求の時期が60歳1カ月(0.4%×59月で23.6%減額)になってからとなると、その繰上げ請求日の前月までの恵美さんの厚生年金加入月数が1カ月増え、合計240月になっています。そのため、240月以上での老齢厚生年金を受給できることから康之さんの加給年金は支給停止になってしまいます。

恵美さんがこのまま在職し続けることを前提とすると、繰上げもして康之さんの加給年金の加算を続けるためには60歳0カ月で手続きするしかありません。1カ月でも繰上げ請求が後になると、そこから先の康之さんの加給年金はなくなるでしょう。

繰上げの注意点の確認が大事

こうして、康之さんの加給年金の調整の有無について恵美さんが60歳になる前に確認することができました。恵美さんは繰上げをするなら60歳0カ月であることを覚えておくことにしました。60歳を過ぎてから相談に行ったら、60歳0カ月繰上げの手続きに間に合わなかったかもしれないので、2人は安心します。

ただ、繰上げ受給には、障害年金が請求できなくなったり、遺族年金が発生した場合に調整がされたり、減額や加給年金のこと以外にも注意点があります。今回の恵美さんに限らず、繰上げをする際は自身に関係する注意点を全て事前に確認しておくことが大切です。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。