買い物依存が家族に残した深い傷跡

それからも永田さんは7年ほど稔さんの買い物依存症と向き合ったという。

心身ともに疲れ果て、本当に限界かと思われたとき、稔さんが脳梗塞で倒れた。一命はとりとめたものの障害が残り、余生は老人ホームで過ごすことになったとのこと。

その時、稔さんの口座残高を見た永田さんは驚愕。老後資金は昔聞いていた話よりも大きく減少しており、永田さんの支援なしではとても老後の生活が送れる状態ではなかった。

永田さんは自身の後悔をこう語る。

「母が亡くなった時、もっと父を気遣い、対話を重ねておくことが大切でした」

たしかにそうかもしれない。スマホを使いこなし、フリマアプリで買い物をする高齢者が増えた時代。誰がどのような形で心の隙間を買い物で埋めてしまうかはわからない。

永田さんや稔さんのような悲しい末路をたどる人が一人でも減るよう、私は伝えたい。

フリマアプリと老後の生活は恐ろしいほど危険な相性だ。油断していると買い物依存となって家族を困らせ、貯金もなくなってしまうことになりかねない。

特に日本に多くいるであろう真面目で無趣味な仕事一筋の方が家族にいる場合は、注意をしてほしい。稔さんのように定年後に買い物にはまってしまう可能性が高い。

そうなってしまったとき、必ずしも法が助けてくれるとは限らない。大切なのは家族との対話だ。心の隙間を作らないよう、今一度家族と向き合ってみてはいかがだろうか。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。