<前編のあらすじ>

永田さん(仮名)は転勤中に母・美枝さん(仮名)を亡くし、久しぶりに実家を訪れると、家は購入品やゴミで足の踏み場もない状態だった。かつて無趣味だった父・稔さん(仮名)は、妻を亡くした孤独と時間を埋めるようにフリマアプリでの買い物にのめり込んでいたのだ。

「必要なものを揃えているだけだ」と主張する父に対し、永田さんは唖然する。スマホを手放さない父の変わり果てた姿に戸惑いながらも、永田さんは父の買い物依存症に対峙する日々が始まった。

●前編:【「ドアを開けた瞬間、唖然としました」定年後、真面目だった父の部屋はゴミ屋敷に…実家の惨状を目の当たりにした息子の衝撃】 

依存症の父と向き合うが…

「父と一緒に過ごして分かったのは明らかな買い物依存症だということでした」

永田さんは当時をそう振り返る。過去テレビ番組を見て知っていた買い物依存症の状況がまさに稔さんに当てはまっていたため、すぐに分かったようだ。

「病院へ連れていくことも考えましたが、根本解決はできないようなのでその方法は選びませんでした」

そこで永田さんは知り合いに買い物依存症を持つ人のコミュニティを紹介してもらい、対話の重要性を知った。それからは稔さんと過ごす時間を増やし、一緒に外出する機会を増やすようになった。家ではスマホを触らせまいと多く話題を振ってみたりと、稔さんの気が少しでもフリマアプリに向かないように尽力した。

しかし、それらの対応が絶対的に不可能なタイミングがあった。それは平日の昼間だ。その間永田さんは職場で仕事をしている。稔さんの相手などできるはずもない。

時折「あ、ごめん〇〇しておいてもらっていいかな……」と連絡するなどして気を逸らそうと画策するが、それにも限界がある。

気づけば突然届く荷物。家に増えるゴミ。どうやら平日の昼間にフリマアプリで買い物しているようだ。

「正直、心が折れそうでした」

ちょうどその頃だ。永田さんはインターネットの広告でクーリングオフや成年後見の制度を知り、なんとか法制度で対応できないものかと検討を始めた。