母が亡くなり唯一の法定相続人に…

そんな私の下に税理士事務所から封書が届いたのは、昨年末のことでした。

なんと、昨年10月に母が亡くなっていたのです。母は再婚していて、先に亡くなった年の離れた旦那さんから相続した自宅や金融資産、株式など億単位の財産がありました。それを全てある公益法人に遺贈するという遺言書を残していたようです。

それ自体は母の遺志ですし、私自身も母の遺産など全く期待していませんでしたから別に構わないのですが、驚いたのはその後受けた説明でした。

母と再婚相手の間には子供がおらず、また、両親やきょうだいは既に亡くなっているため、私が唯一の法定相続人となるのだそうです。そして、法定相続人の私は、母の遺産を受け取る受け取らないにかかわらず、相続税や現物資産の譲渡所得税の申告・納税をしなければならないというのです。

ふざけるな、と思いました。勝手に父や幼い私を残して家を出て行った上に、死んだ後まで尻拭いをさせるつもりか。

腹の底からふつふつと怒りが湧いてきました。

とはいえ、私は単なるIT技術者で相続方面の知識があるわけではありませんから、ここで自分がどう立ち回るべきなのか、皆目見当がつきません。

父に相談して父の会社の顧問弁護士に相談することも考えましたが、ネットで調べたら、弁護士でも得意とする分野はそれぞれ異なるようです。

そんな時にふと思い当たったのが、家政婦の雅子さんのひとり娘のことでした。確か、“相続弁護士”になったと聞いていたからです。

早速、雅子さんからの年賀状を探しました。

●35年の時を経て"育ての母"が再び拓也さんに差し伸べた救いの手とは――後編【小学1年生で母に捨てられた男性、35年後に直面した億単位の相続税申告義務…窮地を救った家政婦母娘との絆】で全貌をお伝えします。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。