夫婦2人で始めた趣味探し
それから将範と愛子は壮大なことから身近なことまで何でも2人で取り組んだ。
旅行も海外旅行や国内旅行、それと陶芸教室に行ったり英会話を学んだりした。朝には2人で散歩をするようになり、次にやってみるものの話をしたり、チャレンジしてみたものの感想を言い合った。
「この前、テレビでうどん特集をしていてな。やっぱり香川のうどんは他とはひと味違うらしい。愛子もうどん好きだろ? 今度、2人で食べに行こう」
将範の提案に愛子はうなずく。
「あら、それはとってもいいわね。うどん巡りなんて最高じゃない」
「そうだな。今度こそいいかもしれないな……」
すると愛子が小さく笑う。
「もう登山はこりごりですか?」
「あれはもういい。あんなしんどいことは2度とゴメンだ。寿命が縮む」
将範がそう言うと愛子は堪えきれないという風に、声を出して笑った。
残念ながらまだ趣味らしい趣味は見つかっていない。だが今が人生で一番充実していると、将範は自信を持って言える。
耳をすませば鳥のさえずりが聞こえた。見上げた空を2羽の鳥たちが、優雅に横切っていった。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。