受診当日、主治医に事情を伝える

そして受診当日。筆者は早めに病院の入口に到着し、哲夫さん親子を待っていました。

しばらくすると、母親に連れられて哲夫さんがやってきました。

哲夫さんは家からほとんど外に出ていないためか、体はやせ細り、顔色は青白くなっています。筆者と向かい合った哲夫さんは、マスクの下にある顔をこわばらせたまま、頭をぎこちなく下げました。

「今日はよろしくお願いします……」

その声はとても小さく、立っているだけでもしんどそうな様子が伝わってきました。

待合室で順番を待っている間、哲夫さんと母親は不安そうな表情を浮かべています。筆者も何だか落ち着きません。

そのような中、哲夫さんの順番が回ってきました。哲夫さんは母親に促され診察室に入りました。筆者もその後に続きます。

3人が椅子に座ったのを確認した主治医は、哲夫さんに向かって言いました。

「急に受診を中断されたので、心配していましたよ。何かあったのでしょうか?」

すると哲夫さんは困ったように母親に視線を向けました。

哲夫さんは自分で事情を説明することが難しい様子だったので、

・今回の更新がうまくいかず、障害基礎年金が支給停止してしまったこと
・そのショックで受診をすることができなくなってしまったこと
・薬も切れてしまい、うつ病が悪化してしまったこと
・そして何より、哲夫さんのうつ状態や日常生活の困難さは更新前後でほとんど変化がなかったこと

これらを母親と筆者が代わりに説明しました。