<前編のあらすじ>
うつ病を抱える沼田哲夫さん(仮名・38歳)は、20歳から障害基礎年金を受給してきました。しかしある日突然、支給停止となり、母親(62歳)は「長男はもう二度と障害基礎年金を受給することはできないのでしょうか?」と不安を抱えています。
障害基礎年金は親亡き後に備えて貯蓄に回していたため、支給停止は哲夫さんの将来設計を根底から覆す緊急事態でした。筆者が原因を探ると、主治医の変更により哲夫さんの状況が新しい医師に十分伝わっていなかった可能性が浮かび上がります。
●前編:【38歳ひきこもり男性の“親亡き後”はどうなる? 突然の障害基礎年金停止に困惑…62歳母が案じた息子の将来】
支給停止からの逆転劇となるか? 再開への道筋は…
更新の際に障害状態が軽いと判断されて支給停止してしまった障害年金を再開させるためには、次の3つの書類を最寄りの年金事務所または街角の年金センターに提出します。
①診断書
②老齢・障害給付受給権者支給停止事由消滅届
③年金生活者支援給付金請求書
すると母親は言いました。
「これらの書類を提出すれば、長男は受給が再開できるのですね?」
「残念ながら、必ず受給が再開できるというわけではありません。再開できるかどうかは診断書の記載内容によります。前回の更新の診断書(障害状態確認届)と同じような内容であれば再開は難しいでしょう」
「そうなのですね……。では一体どうすればよいのでしょうか」
「まずは『現在のご長男はうつ病が重く、日常生活を送るのに多くの困難を抱えている』ということを主治医に伝えます。伝え方は口頭よりも文書の方が望ましいでしょう。なお、精神障害の診断書には『日常生活能力の判定』という項目が7つあり、それぞれ次のようになっています」
①適切な食事
②身辺の清潔保持
③金銭管理と買い物
④通院と服薬
⑤他人との意思伝達及び対人関係
⑥身辺の安全保持及び危機対応
⑦社会性
「これら7項目に沿って『ご長男がどれほどの困難さを抱えているのか?』を主張する参考資料を作成します。その参考資料を主治医にご覧いただき、その内容をふまえた診断書を書いてもらうようにしましょう」
そこまで説明した筆者は、母親から現在の哲夫さんの様子を大まかに聞いてみることにしました。