布団から出てこない息子に母親が抱く不安
哲夫さんは障害基礎年金が止まってしまったショックで自室から出てくる気力もなくなり、布団の中で1日のほとんどを横になって過ごしている日も多いそうです。
哲夫さんがあまりにも自室から出てこない時は、母親は「ひょっとしたら死んでいるのかもしれない」と心配して様子を見に行くこともあるそうです。
食事は1日2回、調子が悪い時は1日1回になってしまうことも。食事量はかなり少なく、ご飯は茶碗に少しだけ、おかずは一口か二口食べるのがやっととのこと。入浴や着替えもほとんどできていないそうです。日常生活に必要な買い物、掃除、洗濯はできず、すべて母親に頼っています。
このような簡単なヒアリングだけでも、哲夫さんの日常生活は母親の支援がなければとても成り立たないことがうかがえました。
「今のようなお話を7項目ごとに詳しくまとめていきましょう。ご長男の同意が得られれば、私の方で文書を作成することができます。また、病院側の了承も得られれば、私も受診に同席して事情を説明することもできます」
「ぜひお願いいたします。長男は就労が困難なので、障害基礎年金だけが頼りです。何とか受給再開できるようご協力ください」
母親との面談後、哲夫さんの同意を得た筆者はご家族からのヒアリングを繰り返し、参考資料を作成しました。
その後、母親が病院に受診の予約を取る際、社会保険労務士である筆者も同席してよいかどうかを聞いてもらいました。すると病院からは「社会保険労務士の同席は可能です」との回答を得ることができました。
しかし、まだ心配な点があります。
それは「主治医がこちらの話を聞いてくれるかどうか?」ということです。
別のご家族のケースになりますが、筆者がご家族と同席して医師に事情を説明したところ、その医師から「医師でもない者(筆者)が口出しをするのはいかがなものか。診断書の記載については、医師である私が判断します」と釘を刺されてしまったケースもあったからです。
「果たして今回はうまくいくだろうか」
筆者の心の中には不安が漂っていました。