良子さんはどうすればよかったのか
では、良子さんはどうすべきだったのだろうか。答えは簡単だ、相続放棄という制度についてきちんと知るべきだったのだ。
そうすれば、相続財産に手を付けてはいけないことはすぐに分かり、出来心であってもお金を引き出すことはなかっただろう。
仮に自ら学ぶことは難しかったとしても、早めに専門家なり家庭裁判所なりに相談すべきだったのだ。
相続に関するルールは複雑かつ厳格だ。「知らなかった」「そんなつもりはなかった」という言い訳は一切聞き入れてもらえない。
まずは速やかに調べる。不安であったり分からなかったりすれば専門家などへ相談するべきだ。結論が出るまでは下手に触れない。これが鉄則だ。
その後の良子さんと美代子さんは…
良子さんと美代子さんは300万円の借金を数年かけて無事返済したようだ。単純相続していない美代子さんは一人だけ相続放棄できるのだが、妹の良子さんを気遣って相続放棄しなかったようだ。
姉妹はあの日の失敗を今でも悔いているようで、単純相続にならないよう、必要な手続きの順番を書いた指示書のようなものを作成して遺言書と一緒に保管しているという。
相続放棄は一度でも、一部でも財産に触れてしまうとできなくなってしまう。万が一のことが起こらないように、故人の財産については相続をするかどうか、負債含めた全体の調査が終わるまで手を付けてはいけない。
人生は思いもよらないことがある。「大丈夫だろう」その甘さは絶望に代わる。今日も日本のどこかで住田姉妹のように相続放棄ができず困る人たちがいるのだろう。
そうならないためにも相続においては慎重な対応をしていくべきなのだ。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。