サラリーマンの根性なめんなよ

ひと眠りしてから目を覚ますと、昨夜の吹雪が嘘のような快晴の空が広がっていた。

「力也、足の調子はどう?」

「痛えよ。でも休んだ分、昨日よりはましな気もする」

「もしいけるなら、山頂を目指して移動しようと思うんだけど」

「馬鹿にすんな。企業で揉まれてるクソサラリーマンの根性なめんなよ」

力也が悟の肩を小突く。悟が力也に肩を貸し、力也の分のバックパックは光輝が背負った。3人は山頂を目指し、再び山を登り始めた。

山頂に近いほうが見晴らしがよく、救助隊も発見しやすいためだった。また、うまくいけば正規の登山道を見つけることができ、自力で下山できる可能性もある。

間もなく3人は樹林帯を抜けた。照りつける太陽が白銀の斜面に反射して、一面は光に満たされた。

「あれ、もしかして救助隊か?」

「だから言っただろ? これでもう安心だ」

悟が救助隊の姿を見つけて手を振った。安堵のおかげで込み上げていきた涙で視界がぼやけた。それでも、白銀と群青のコントラストはにじむことなく、はっきりと、光輝たちの向かう先に広がっていた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。