遺品整理で出てきたものは

母の死から1ヶ月が経ったころ、益実は再び優から呼び出しを受けた。

「ごめんね、どうかしたの?」

長引いた打ち合わせのため、待ち合わせ時間から遅れること30分。この前と同じ店の同じ席に腰を下ろすなり切り出した益実に、優は通帳と白い封筒を差し出した。

「何これ?」

「遺品整理をしてたら出てきたんだよ」

益実は軽く通帳を開いて見た。通帳は300万という金額が記載されている。名義人には善子の名前。

「それ、母さんが姉さんのために貯めていたお金みたいなんだ」

「え……?」

「白い封筒あるだろ? そっちは姉さん宛の手紙。俺宛の手紙もあって、それにはこれを益実に渡してくれって書いてあったんだ」

こういうとき驚けばいいのだろうか。あるいは感動すればいいのかもしれない。だが、益実の胸に去来したのは単純に疑問だった。

「なんで?」

「まあそうなるよな。とりあえず手紙呼んでみなよ。そっちはさすがに中身見てないからさ」

優はしきりにこちらの顔色をうかがうように見ている。益実は通帳をテーブルに置き、封筒の中に入っていた手紙を取り出した。

●手紙には、益実に辛い生活を強いた母の本心がつづられていた。母の真意と300万を残したワケを知り、悲しみにふける益実に、優がつきつけたのはあまりに非情な要求だった。後編:【「相続放棄、してほしい」母が内職してまで娘に残した“300万”を狙う非情な弟に、40代女性が返した一言とは?】にて詳細をお届けします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。