弟から再び連絡が

優から再びの連絡が来たのは冷たい雨が降っている夜中の2時だった。

連絡をしてくるには非常識すぎる時間だったこともあり、内容はすぐに察することができた。

「母さんが亡くなったよ」

思った通りの報告を受けて、益実はベッドに入ろうとしていた手を止める。

「そう」

「ゆっくりと眠るように亡くなったよ」

「そう」

益実は機械的に返事をするだけだったが、自分でも驚くほどに、本当に何も感じるものがなかった。

「……明日の夜に通夜があって、明後日に葬式があるんだ。姉さんはどうする?」

益実は少しだけ考える。

忌引き休暇で3日ほどの休みならそこまで仕事に影響が出ないだろう。唯一の肉親の死なのだから葬式くらいには顔を出してもいいんじゃないかと考える。

だがすぐに、そんな甘ったるくて感傷的なことを考えた自分を嘲笑う。

大学進学が叶わなかったあの日、益実はもう2度と彼らと顔を合わせないと決めていた。自分にはもう帰る場所はないと心に決め、退路を断ち仕事に邁進してきた。

そのおかげで今がある。この前優に言った通り、2人はもうとっくに死んでいるのだ。何を今更――。

「やめておく。仕事も忙しいし、他の人たちに迷惑はかけられないから」

「……そうか。分かった。じゃあこっちで色々とやっておくよ」

「ごめんね、優に色々と押しつけるかたちになっちゃって」

「大丈夫。それじゃまた連絡するね」

通話を終え、益実はベッドに横になる。暗い天井を見ながら死んだ母のことを思い出そうとしたが、睡魔に負けあっさりと眠ってしまった。