<前編のあらすじ>
佳菜子は父を恨んでいた。連帯保証人となり借金をかかえ、ギャンブルと酒におぼれ暴力をふるい家庭を壊し、母の死の遠因を作ったからだ。
そんな父にも、ついに最後のときが訪れた。佳菜子には気がかりがあった。父が病床でうわごとのようにつぶやいた「青色の梅の花」の存在である。
いったい何のことなのか。父の遺品を整理しながら、てがかりを探るなかで、佳菜子は父の日記を見つける。
「今日、満子とあの梅を見た。相変わらず綺麗だった」
そこには、父が母と共に故郷の田舎町へと旅行し、「梅の花」を見たと思しき記述があった。佳菜子は真実を知るため、日記に記された父の故郷へと向かうことを決めた。
前編:「本当は優しい人なんだよ」酒とギャンブルにおぼれ、暴力をふるい…”最低の父”を母がかばったワケ
一路父の故郷へ
青いペンキを塗り重ねたような冬の休日の朝、佳菜子は車に荷物を詰め込み、父の故郷に向けて出発した。
「青色の梅の花が見たい」
父が最期まで口にしていたその言葉の意味。今さらそれを知ったところで、もう父に見せることはできないし、そもそも見せてやる義理も感じない。にもかかわらず、佳菜子は懸命に「青色の梅の花」の正体を追い求めている。
カーナビが徐々に目的地に近づいていることを示すたび、ハンドルを握る手には自然と力が入ってしまう。