<前編のあらすじ>

ゆかりの義母・瑛子はいわゆる偏屈な姑である。

節分の日には、ゆかり宅に上がり込み、頼まれてもいないのに恵方巻から大豆の食べ方まで監視・指導する始末である。

せっかくの節分に嫌な空気だけを残し、嵐のように去っていった瑛子。彼女が起こすトラブルは、もちろんこれだけで終わることはなかった……。

前編:「よそ見しないの!」“恵方巻の食べ方まで監視する”義母、最悪な空気になった節分の結末は

見知らぬ番号から電話が

土曜日の午後、暖房の効いたリビングで、翔太と一緒にテレビを見ていたときだった。自宅の電話がけたたましく鳴り響き、ディスプレイには見知らぬ番号が表示されていた。

「はい、どなたでしょうか……?」

ゆかりは不審に思いながら電話を取ると、張り詰めた声が耳に流れ込んできた。

「木本瑛子さんのご家族の方でしょうか?」

「ええ、木本瑛子は義理の母ですが……」

市内にある総合病院を名乗ったその声は、義母が買い物中に倒れて、救急車で病院に運ばれたことを淡々とゆかりに告げた。

とはいえ、現実味のない話だった。義母はつい先日、あんなに元気そうに豆まきを指揮していたばかり。あのパワフルな義母が倒れる絵が、いまいち想像できなかったのだ。

「おばあちゃん、倒れたって」

電話を切ったゆかりはテレビの前の翔太に呆然と伝える。翔太は聞こえるか聞こえないか微妙な大きさで「え」と喉の奥を鳴らす。テレビからは昼間のワイドショーの賑やかな笑い声が響いている。