<前編まとめ>
地元で愛されてきたラーメン店を継ぐことを決意した佐伯円さん(40歳・仮名)は、父の背中を見て育ち、事業承継に向けて経営を学びながら準備を進めていました。
ところが代表者交代の直前、税務署から「過去5年分の消費税が未納」との通知が届きます。未納額はなんと3700万円。経理を担当していた母も詳しい事情を把握しておらず、すでに何度も督促が送られていたことが発覚します。
家族の味を守るために準備を重ねてきた円さんでしたが、思わぬ事態により、店を手放さざるを得ない状況に追い込まれてしまいます。
●前編:「家族の味を守りたい」ラーメン店を継ごうとした40歳娘の運命を変えた税務署からの“思わぬ通達”
数千万円の債務で危機一髪
代表者がまだ父のままだったため、債務の責任はすべて父に。高齢の父は、年金で食いつなぐ生活に突如として数千万円の債務を背負うことになり、自宅や土地などの資産もすべて手放さざるを得なくなったのです。
高齢の父が家も財産も全て失うことになったことはまだ不幸中の幸いで、もし代表者交代が済んでいたら、消費税の納税義務は新たに代表者となった円さんが負うことになったでしょう。もう数週間通知が来るのが遅かったら、社長交代の手続きが済んでいました。「あと一歩で私の人生が終わっていた」と円さんが振り返るように、まさに「危機一髪」の状態だったのです。
大好きだった店を閉じるという現実に落ち込みましたが、円さんは大好きだった店を続けたいと、中学生の子供を育てながらも会社員として働き、知人の飲食店でも夜のアルバイトを続け、再出発に向けて開業資金を貯める日々を送っています。