小さな会社の事業承継の落とし穴に注意
家族経営の小規模事業では、経理や労務管理が曖昧になりがちです。経営者やその家族が「なんとなく」やっていることが、後々大きなトラブルにつながることも珍しくありません。
今回のような消費税の未納は稀ではありますが、社会保険の未加入、従業員の労働時間や残業代の計算の誤り、私的な支出を経費処理していたことによる追徴課税などの隠れ債務が存在していることはよくあることです。
これらは決算書に明記されておらず、「帳簿には現れない負債」として承継者を直撃することがあります。
こういった問題を事前に調査するため、M&Aなどの第三者承継では専門家によるデューデリジェンス(事前調査)を行うのが常識ですが、親子間での承継ではそうした調査がされず、「気づいたときには遅かった」というケースもありますので注意が必要です。
たとえ小さな家族経営の店であっても、“知らなかった”では済まされない時代です。事業を子どもに引き継がせるつもりなら、親世代が責任をもって、税理士・社労士などの専門家のサポートを受けながら、健全な経営基盤を整えておく必要があります。
事業承継は「愛情」だけでは守れない
今回ご紹介した佐伯円さんの事例では、未納消費税が代表者交代の直前で発覚したことにより、本人の人生に致命的なダメージを負わずに済みました。
しかしこれは運がよかっただけの話です。
「うちのような小さな店には関係ない」
「家族だから気にしなくて良い」
このように考えていると、愛着ある事業を一瞬で終わらせてしまうこともあります。
親から子へのバトンを確実に渡すためには、「気持ち」だけでなく、「仕組み」をしっかりと整えることが必要です。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。