<前編のあらすじ>

清香と孝輔の息子・啓太は名門私立大学を卒業後、一流企業に入社するなど、順風満帆な人生を送っていた。親としても息子を誇りに思っていた。しかし、入社2年目の年末、家族の集まりで啓太がこう口を開いた。

「仕事辞める」

唖然とする清香たちだが、啓太の決意はどうやら固いようで……。

前編:完璧だった息子の人生に一体何が? 有名私大卒業後、一流企業に入社した息子が両親に告げた「衝撃の言葉」

息子の決断に動揺、考えを改めるよう促すが…

「な、何を言ってるんだ?」

最初に口を開いたのは孝輔だった。

「だからもう会社を辞めるって言ってるんだよ。何度も言わせないでよ」

清香は精一杯の笑みを浮かべた。

「もちろん仕事はとても大変よ。何でも上手く行くわけじゃないわ。私だって最初は嫌な事だったりキツいことだらけだった。でも長く続けていけば慣れてくるし……」

しかし啓太は無表情のまま首を横に振る。

「慣れて何になるんだ。こんな仕事に慣れてしまったらそれこそ人生に悪影響だよ」

「ど、どうしてよ? あなたは今、自分の置かれてる環境を分かってる? 国内最大手の企業にいるのよ? お給料だって沢山もらえるし、将来有望じゃないの」