別居費用負担で6000万円の赤字⁉ 判明した年金生活への大打撃

家族の話がかみ合わず物事が先に進まないため、筆者は次のような提案をすることにしました。

「仮に隆さんが別居したらどのくらいのお金がかかるのか? 大まかな金額になってしまいますが、今ここで確認してみませんか? まずは『隆さんの住まいはどうするのか』を決めてみましょう」

母親と隆さんの希望により、現在の自宅近くにワンルームマンションを借りる想定としました。筆者はスマホを取り出し、周辺の家賃相場を調べてみたところ、家賃と管理費の合計で月額8万円~9万円になることが分かりました。

次に基本生活費の金額です。基本生活費には、食費、水道光熱費、通信費(スマホ代やプロバイダー代)、被服費、日用品や雑費、医療費などがあります。隆さんは発達障害の特性上、手先が不器用で手順を踏んだ作業も苦手なので自炊は困難とのこと。そこで食費を多めに見積もることになり、基本生活費は月額10万円としました。以上のことから、隆さんの支出は月額約19万円とします。

隆さんの現在の収入は障害基礎年金の2級および障害年金生活者支援給付金の月額7万3310円(2024年度の金額)。よって月の赤字は約12万円となります。

仮に赤字の月12万円を親が負担した場合、1年間で144万円になります。

隆さんの平均余命の82歳までの42年間で計算すると、赤字の合計は6000万円を超えてしまいます。

この金額に母親も隆さんもびっくりした表情になりました。

「さすがに6000万円は用意できません……」

母親は小さな声で言いました。

隆さんも自分の生活費だけで6000万円もかかることは想定外だったようです。

すると、それまで黙って話を聞いていた父親が口を開きました。

「お話の途中、横から失礼します。私からすると『親のお金をあてにして生活しようとする時点で甘えている』としか思えないのです。別居うんぬんの前に本人が仕事をして自分の生活費を稼げるようになるのが先ではないのでしょうか? 息子はなぜ今になっても仕事をしないのか? そこが理解できないのです」

父親は声を荒らげることなくそう言いましたが、その声には怒りの感情がこもっていました。

隆さんが別居した場合のお金の見通しが立たず、父子関係は悪化したまま。

一体どうすればよいのか。隆さんと母親は一層不安な表情になってしまいました。

●ひきこもり歴20年の息子とそれを許せない父親。家族が行き着いた驚きの結末は、後編「なぜ仕事をしないのか?」40代ひきこもり息子が年金暮らしの両親に打ち明けた「意外すぎる本音」で詳説します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。