宮下しのぶさん(仮名)は自宅近くのスーパーでのパート歴が10年以上になります。明るくて責任感が強く、面倒な業務も率先して引き受ける宮下さんは、パート仲間だけでなく社員からも全幅の信頼を寄せられています。

そんな宮下さんは1年ほど前、あるトラブルに見舞われました。きっかけは、長年絶縁状態だった実家の兄から突然かかってきた1本の電話でした。

「嫌悪する兄からの電話を受けて、とても冷静ではいられませんでした。どうしていいか分からない私が一筋の光明を見いだしたのが、あるテレビ番組に出演されていた専門家の方でした」

実は、宮下さんのご実家は高齢でひきこもりの兄がいて「8050問題」を抱えていたのです。ひきこもり支援を行う専門家との出会いと、支援を受けた兄の変化、さらに宮下さん自身の心の変化など、宮下さん自身に激動の1年を振り返ってもらいました。

〈宮下しのぶさんプロフィール〉

東京都在住
48歳
女性
パート
会社員の夫、浪人生の次男と3人暮らし
金融資産850万円

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私は子供の頃から兄のことが大嫌いでした。年が離れていて、勉強も運動も大してできない私のことを完全に見下していたからです。「俺はスターだけど、しのぶは凡人だからな」という言葉を何度聞かされたかしれません。

確かに、兄はスターでした。中学生の頃は野球部のエースで、生徒会長も務めていました。バレンタインデーには、幾つもチョコレートをもらってきて自慢げに見せてくれた記憶があります。しかし、今思えばあの頃が兄の人生の絶頂期だったのでしょう。