年金分割を進めることに

千里さんとしては、気になっていたのが離婚後の年金のこと。これからは、世帯として夫の年金はなく、自身の年金だけで暮らすことになりますが、離婚時の年金分割制度があることを知ります。

年金分割は結婚した月から離婚した月の前月分までの2人の厚生年金加入記録を分割し、分割後の記録で老齢厚生年金を計算します。

結婚後、啓悟さんは33歳までの5年間と50歳前(法人化の時)から70歳になるまで(上限年齢)の約20年間厚生年金に加入し続けたのに対し、千里さんは60歳までの間、国民年金に未加入か、第1号被保険者、あるいは法人化後は第3号被保険者でした。

つまり、結婚後、千里さん自身は厚生年金に未加入でした。年金分割には、離婚すると夫婦の厚生年金加入記録の合計の50%を上限として元夫・元妻の合意で分割する「合意分割」と、2008年4月以降に第3号被保険者期間がある場合に合意なく強制的に分割できる「3号分割」があります。千里さんは結婚期間中、2008年3月以前の第3号被保険者や年金未加入者、第1号被保険者だったため、「合意分割」の対象になりそうです。

「結婚していた期間、私はずっと働いていなかった。だから夫のその期間の50%の分割が受けられることになりそう。それなりに増えるかも」と思います。千里さんは早速、年金分割を行うとどうなるかが表示される情報通知書を入手するため、年金事務所で情報提供請求を行います。

すると、年金分割の説明をする窓口の担当職員から「分割すると、千里さんの老齢厚生年金は確かに増えますが、一方で老齢基礎年金が減りますね……」との説明がありました。婚姻期間中の夫の50%を分割され、その結果、年金が増えると聞かされていたため、減らされる年金については初耳の千里さん。一体どういうことでしょう。

●熟年離婚による年金分割で発覚した想定外の事実に呆然……。千里さんの老齢基礎年金はなぜ減ってしまうのでしょうか? 年金分割で損しないための知識は後編【熟年離婚で「元夫の50%の年金」をもらえるはずが…おひとりさまになった70代主婦の大誤算】で詳説します。

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