夫婦が離婚した場合、年金については離婚時の年金分割制度があります。結婚していた期間中の厚生年金加入記録を分割する制度で、その結果、今後の年金額が変わることになります。分割を受ける側は年金が増えることになりますが、思っていたほど増えないケースもあります。
仕事を辞めた夫との衝突が増え、熟年離婚を考え始める
千里さん(仮名・78歳)は結婚前に7年会社に勤め、結婚してからはずっと専業主婦でした。結婚してからは家事に育児に奔走していました。夫の啓悟さん(仮名)は78歳。28歳で結婚して50年になります。長女(48歳)と長男(44歳)はそれぞれ結婚してから別で暮らしています。
啓悟さんは大学を卒業して23歳から10年会社に勤めた後、結婚してからだと5年後、技術職の個人事業主になりました。長く個人事業主を続け、50歳前に法人化もしました。
そんな啓悟さんも体力的にきつくなったことから75歳で完全に引退しました。啓悟さんはリタイアして、仕事がなくなった喪失感が大きく、毎日家にいて何をして過ごせばいいのか分からなくなりました。
千里さんとしても、啓悟さんが現役だった頃は仕事に没頭してくれていたため、気楽に過ごしている部分もありましたが、啓悟さんの引退後は毎日朝から晩まで顔を合わせます。そのため、ささいなことで衝突してはぎくしゃくするように……。価値観の違いも顕在化し、千里さんは毎日を一緒に過ごすのがだんだん苦痛になってきました。「もう我慢できない。子どもたちもみんな結婚しているし。離婚して1人になって残りの人生を満喫したいな」と思います。
そのことをまず、長女と長男に話してみました。すると「結婚生活は山あり谷ありだよ。ここまでずっと一緒に生活してきたのに今更離婚するの?」「離婚すると損も多いんじゃない? 夫婦でいた方が……よくは分からないけど」と驚きを隠せない様子。
しかし、千里さんは離婚を決意。啓悟さんもこれに同意し、まもなく離婚しました。