<前編のあらすじ>

遥香は義母の芳子と同居している。世間は姑と同居なんて……とまゆをひそめるかもしれないが、遙香は明るく、料理上手でもある芳子を憎からず思っていた。

芳子の浪費癖が判明するまでは。

息子を女で一つで育てた芳子はこれまでできなかった贅沢を満喫していた。家には芳子が通販で購入した美容家電や食品が毎日のように届く。

夫である優大の財布から購入費用はねん出されているので、家計に大きな影響はない。問題はその数の多さである。芳子が買いあさったモノは日に日に生活スペースをし始めていた。

我慢をしていた遥香だったが、ついに覚悟を決める。

前編:「これくらいの贅沢はいいじゃない」と浪費ばかり…念願のマイホーム暮らしと思いきや、円満だったはずの義母の「仰天行動」

もはや戦争

「これは……もう、戦争よね」

義母がまだ寝ているうちに、遥香は静かに物置と化した2階の部屋の扉を開けた。元々は優大の趣味部屋にするはずが、今では完全に義母のテリトリーだ。そこには、使用感ゼロの美容ローラー、空気を入れるだけで「腹筋割れる」と豪語するアブベルト、そして一度も水が通っていない浄水ポット——不用品の山が広がっていた。

「……さすがに、これはないでしょ」

目を引いたのは、アボカドスライサーなる商品。義母がキッチンに立つことはあっても、アボカドを切っているところなんて一度も見たことがない。

「……この子には旅立ってもらいましょう」

遥香は慎重に箱を手に取り、ゴミステーション行きのボックスへと入れる。他にも数点、今後使用される可能性が極めて低く、かつなくなってもバレなさそうなものを見繕う。罪悪感ゼロとは言えないが、これは家庭内衛生を守るための人道的処置である。

「よしっ! 今日のところはこんなもんかな」

しかし、悪いことはできないものだ。

「……遥香さんっ!! これ、どういうことかしらっっ!」

振り向けば、義母が今朝捨てたばかりのアボカドスライサーを掲げ、遥香の方へ迫ってきていた。さながらホラー映画のようだった。

「え? えーっと、それは……」

「捨てたわね? 私のものを、勝手に!!」

「違いますっ。捨てたんじゃなくて、その……整理を」

「どこが整理よ! これ、この前届いたばっかりよ!?」

「……すみません」

謝りながら遥香は自分の失態をひしひしと感じた。義母の執念深さを、完全に甘く見ていた。それともあるいは、遥香は義母と一緒に暮らすということ事態を甘く見ていたのかもしれない。

これも、嫁姑問題ってやつなのかな――。

喧々諤々と文句を並べる義母を前に、遥香な思わず頭を抱えたくなった。